ピアノwiki(調律) フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
各弦の張力を調整する、いわゆる「調律」は、今日のほとんどのピアノが平均律で調律されることや、弦の総数が200を超えること、他の弦楽器に比べて張力が大きいことなどから、演奏者が自分で行うことは稀有で、「調律師」と呼ばれる専門の技術者が行う。平均律ではオクターブとユニゾンを除いてどの2音の振動数も整数比にない。これによって本来純正でうなりの生じない完全5度、完全4度、長3度に固有のうなりが生じる。このようなうなりを聞き取り、所定のうなりをつくることを訓練することによって、各ピアノにとって最適な平均律音階を作り出すことができる。うなりを聞き分けることは容易であるが、それをピアノにつくりだすためには充分な訓練が必要である。
最近ではハンドヘルドコンピュータで周波数を測定し調律する方法もある。直接的な訓練の機会を必要としないので、調律師の教育を通信教育で行うことが多いアメリカでは特に普及している。しかしピアノにはインハーモニシティがあるため、うなりを聞いて調弦した場合、1オクターブ上の弦をうなりのない高さに取ると、ちょうど2倍の周波数よりも若干高くなる。これを繰り返してピアノ全体の音高を決めると高い音はより理論値よりも高く、低い音はより低く調律される。インハーモニシティはピアノ1台ごとに異なるので、美しく響く調律も1台ごとに異なる。よってそのような電子機器が普及しても、「最終的には聴いて補正すること」をソフトの開発者自身が勧めている。
チューニングピンは回した位置で簡単に止まるわけではない。未熟な調律師が調律したピアノはあっという間にピンがゆるみ、音高が狂う。また調律師の仕事には、いわゆる調律に限らず、修理、整調(アクション調整)、整音(音色に関わる作業)に対する知識と訓練、そして構造全体に対する知識も必要であり、調律の実技も含め、そのための充分な環境と訓練、そしてそれに基づく経験が要求される職域であることに変わりはない。
■調律の変更
テリー・ライリーには、通常のピアノの調律である平均律ではなく、純正律に調律されたピアノを用いる作品がある(「in C」など)。ジェラール・グリゼーの後期作品「時の渦」は、ピアノの特定の数音を四分音下げて調律することが要求される。調律の狂ったような音に聴こえるが、これは合成された倍音に基づく調律である。特に激しい跳躍のある第1部のカデンツァにおいて効果的に響く。
いずれの場合もコンサートに用いる際はピアノ調律師の特殊な技能が要求され、また日本のコンサートホールではこのような特殊調律を断られる場合があるので、それでもあえて演奏する場合にはピアノのレンタルが必要になる。


